2020年4月17日
2020年4月1日、民法が改正され新しく『配偶者居住権』が施行されました。 相続法改正の背景には、高齢化や少子化が進んだ現代社会が関係しています。 高齢化により、夫が死亡し、相続開始時には残された配偶者である妻も高齢の場合が増えてきました。一方、子は経済的に独立している場合も多く、また、少子化により相続人である子の人数は減少。相対的に子の遺産の取得割合は増加しています。 遺産分割にあたり、配偶者(妻)が住み慣れた自宅を離れて新たな生活を立ち上げることは、精神的にも肉体的にも大きな負担となり、今回、配偶者の保護を図るべき、相続法が改正され、配偶者居住権が創設されました。
1.配偶者居住権とは?
相続法改正による『配偶者居住権』とは一体どのようなものなのでしょうか?
そもそも、不動産には所有権という権利があります。 この所有権という権利を①「使う(住む)権利」②「その他の権利」(所有) に分離して別々の人が相続することを認める仕組みになっています。
この①「使う(住む)権利」を配偶者居住権といい、残された配偶者を守るために新設されたものです。
自宅を現金にして分割するのが難しい場合、 ① 「使う(住む)権利」を配偶者(妻) ② 「その他の権利」を子 が所有し、権利を分離することができるのです。
配偶者居住権は、相続が発生した時点で自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、売却することも相続させることもできない、配偶者だけに認められた権利です。 (不動産の登記簿謄本に登記をしなけれは効力を発揮しませんので注意して下さい。)
2.配偶者居住権により相続税が軽減されるケース
今回、施行された配偶者居住権を活用することにより、相続税が軽減されるケースがあります。
一次相続では、配偶者(妻)は「配偶者の税額軽減」の適用になり、ほとんどのケースで結果的に相続税の支払いは免れます。 また数年後妻(母)が亡くなった場合、妻(母)が持っていた配偶者居住権は単に消滅しただけで子に移転するものと考え(二次相続)、相続税の課税はありません。
一次相続で配偶者居住権を活用せずに父から子に自宅を相続させれば、子には自宅評価額の相続税負担が生じます。しかし、配偶者居住権を活用すれば、子は一次相続では、配偶者居住権の評価額分の相続税負担が軽減され、二次相続時には税負担無しで自宅を所有することができるのです。相続税の軽減を兼ねた、配偶居住権の活用は十分に考えられます。
3.配偶者居住権の落とし穴 リスク対策も忘れずに
しかし、活用のためにはリスク対策も同時に必要です。
配偶者居住権を設定した自宅は、配偶者(妻)と自宅の所有権を有する相続人(子)の両者が合意した上でないと売却することができません。
例えば、配偶者居住権を有する母親が高齢者施設に入所することになった場合、認知症により親子の話し合いができない状況だったりすると、自宅の売却により、入所費用をまかなうことが難しくなるといったことも起こりえます。 また、親子の話し合いがまとまり自宅の売却ができたとしても、思わぬところで子が贈与税を支払わなければならないケースもあります。
4.生前対策で悔いが残らない相続を
このように、制度の上手な活用、遺言、遺産分割、相続手続き、相続税対策など、専門家に相談することを強くお勧めします。
福島・郡山相続相談センターでは、豊富な実績とノウハウを生かし、お客様の問題点を的確に把握、最適な相続を実現します。
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